二次元戦士の独り言

自衛隊に4年間(2任期)勤務していた元自衛官のブログ。

北朝鮮ミサイル発射で報道のちょっとした疑問

 

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 近年増加する北朝鮮によるミサイル発射実験。トランプ大統領が腹を立てて重い経済制裁処置を科している事でも有名だと思う。

 最近も北朝鮮は7月25日に2発のミサイルを発射した。更に31日未明、弾道ミサイル2発を日本海側に向け発射したとJCSが発表した。25日に続き、1週間で2回のミサイル発射となった。JCSによると、ミサイルは東部・元山(ウォンサン)市付近から発射されたミサイルは250キロ飛行し、日本海に落下した。

 

日本経済新聞

 【ニューヨーク=大島有美子】韓国メディアは31日早朝(日本時間)北朝鮮が同日未明に複数の飛翔体を発射したと報じた。飛行距離などは不明。北朝鮮は25日にも飛翔体を2発発射している。日本政府は29日、同飛翔体を短距離弾道ミサイルと認定した。弾道ミサイルであれば、国連安全保障理事会の決議に違反する。

 と報じた。

 

 ここで、ニュースなんかを見ているとふと疑問に思うことがある人もいるのではないかと思う。”ミサイル”、”飛翔体”、ICBM?その違いとは。

 

 よく聞くミサイルと飛翔体の違い

 

 この飛翔体という言葉。普段は聞き慣れないが北朝鮮がらみのニュースだと頻繁に耳にする。

 そもそも飛翔体とは

    『高空を飛翔する人工物。宇宙ロケットや弾道ミサイルなど』

 

 人工物。人の手で作られたものを総じて飛翔体と呼んでいる。ではなぜミサイルという表現を使わずにわざわざ飛翔体と呼んでいるのか。

  それはロケットと弾道ミサイルは基本構造がほぼ同様のため、情報が公開されていない飛翔体については外部から判断することは非常に困難なためだ。

  北朝鮮は時折、人工衛星の発射実験という名目でミサイル実験を行なっていることもあり、北朝鮮側も「あれはミサイルじゃない、ロケットだ」と主張する場合もある。

 

 つまり発射された時点では飛翔体の正体が分からないため、報道ではミサイルと呼ばず「飛翔体」と呼んでいるということだ。

 

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 ICBMって?ミサイルにも種類がある。

 

 ICBMとは大陸間弾道ミサイルのことで軍事略語ではICBMと呼ぶ。これもたまに報道で耳にする。そもそも大陸間弾道ミサイルとは有効射程が超長距離で、太洋で隔てられた大陸間を飛翔できる弾道ミサイルのこと。アメリカ合衆国ロシア連邦本土間の最短距離である5,500km以上が「ICBM」の基準になっている。

 

一方、「中距離弾道ミサイルというものは軍事略語で「IRBM」と呼ばれる。有効射程3,000〜5,500km程度の弾道ミサイルのことで「中距離ミサイル」とも略される。

 有効射程1,000〜3,000程度のものは「準中距離弾道ミサイル、軍事略語で「MRBM」に分類されている。弾道ミサイルのうち射程が概ね1000km以下のもの「短距離弾道ミサイル、軍事略語で「SRBM」と呼ばれるものもある。

 

 上記のように様々な種類がある弾道ミサイル、「BM」大気圏の内外を弾道を描いて飛ぶ対地ミサイルだ。加速で得られる慣性によって、いわゆる弾道飛行と呼ばれる軌道を通過し、目標に到達する。

 

 

 因みに弾道ミサイルには「潜水艦発射弾道ミサイル」(SLBM)や飛行機に搭載された「空中発射弾道ミサイル」(ALBM)といった種類もあったりする。

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 以上の内容は高射部隊での座学で行なった内容をミサイル報道を見ていた際に、思い出したものでへーそうなんだ程度で見てもらい、今後の報道や北朝鮮問題へ少しでも関心を持ってくれれば幸いだ。

89式小銃について

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89式小銃のあれこれ

 陸上自衛隊はじめ、海自自衛隊一部の部隊や海上保安庁でも使用される現代日本の純国産主力自動小銃89式小銃だ。本小銃は64式小銃の後継として1980年に開発された。

 

 開発元は豊和工業。口径5.56mm、全長916mm、重量3.5kg、銃身長420mm。ピストン部の開発には米国の「AR18」のショートストロークピストン式が参考にされたが、より作動が確実なロングストロークピストン式(ガス圧式)が採用された。開発にあたっては欧米人より小柄な日本人の体格にあわせ海外の小銃に比べてやや小さめ軽量で、銃床部は頬付けがしやすいよう左右非対称の設計となっている。

 被筒部前方には脱着可能な二脚があり、伏せ撃ち時や防御陣地の掩体などから安定した射撃を重視した防御戦闘を想定されているようで、専守防衛自衛隊向けのデザイン。また、専用銃剣の取り付けが可能で突撃や格闘戦にも優れる。

 発射機構は安全装置、単発、連発、3点射、が切り替え可能で、切り替え軸は匍匐の際に地面と接触し、誤って動かないように右側に配置されているが、使いにくいという指摘があり2003年のイラク派遣をきっかけに左側にも増設された。一般的な固定銃床の他に、狭い車内や航空機での移動が主な戦車部隊や空挺部隊用に折り曲げ式銃床のタイプも配備されている。

 使用する弾薬と弾倉は、西側諸国標準となったNATO規格の5.56×45㎜NATO弾とSTANGA弾倉となっており米軍や加盟国との共有も可能で、普通科部隊に配備されている5.56㎜MINIMI軽機関銃とも弾薬相互性がある。また、06式自動擲弾を装着でき火力支援が可能となっている。

 銃本体は銃身部、機関部、引金室体部、銃尾板部で構成され、一般的に加工が容易で生産性が高く低コストのスチールプレスによって作られている。64式小銃に比べ部品点数は10%少なくなっており整備が容易になっている。1丁あたりの値段は20万円代後半〜34万円くらいだが調達数により変動する。というのも武器輸出3原則により納入先が日本政府のみに制限されているためで、世界各国の主力小銃としては高額な部類に入る。

 また89式小銃には後方向けに「バディー」という愛称があるが、そう呼んでる隊員は自分が知る限りおらず、「ハチキューシキ」や単に小銃と呼ばれている。

 

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黒いテープを銃に巻く理由

  よく89式小銃に黒いテープを巻いているのは何故かという質問がある。あれは脱落防止処置であり、64式小銃採用時代に摩耗等した部品が訓練中脱落しないようにブラックテープ(通称ブラテ)で各箇所を巻いていた。今の89式小銃にやたら部品が脱落するといったようなことはあまりないと思うが、伝統を重んじる自衛隊は物品愛護の観点から小銃に脱落防止は絶対となった。部品脱落があまりないと言っても絶対にないわけではない。特に切り替え軸の止め金という小さな部品は衝撃なんかで飛ぶ可能性があるためホースを切ってそれをはめて使ったり、脚部のリングや夜間照準止め軸はたまに無くす隊員もいる。小銃以外にも銃剣の剣紐、鉄線狭カバーにもブラテを巻いて脱落防止をする(特に鉄線狭カバーは脱落防止をしないと高確率で無くす)。自分の部隊では弾倉にも麻紐を輪っかにした物を弾倉下部の穴と用心金に通してを使ったり、PX(駐屯地内にある売店のこと)で売られている脱落防止紐を買うなどして弾倉の紛失防止に勤めていた。

 

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  89式小銃は扱いやすく当たる銃

 

 89式小銃は世界的にも高水準な小銃である。3.5kgとM16と同等の重量、そして日本人の体格に合わせて設計されているためか取り回しが良い。銃剣着剣時の格闘性も高い。また銃口には大型の消炎製退器を備え、5.56×45㎜NATO弾という小口径高速弾を使用するため命中精度も高い。もちろん射手の腕にもよるが自分の場合、伏せ撃ちで静的目標を300メートルで5発射撃した際、的の真ん中ではないにしろ5発当たってくれる。戦場で敵の兵士に弾を当てるには申し分ないと思う。更に部品点数を少なくすることにより整備性が64式小銃に比べて向上している点なども米軍から評価を受けているらしい。

 この小銃の欠点をあげるとしたらやはり拡張性の少なさが真っ先に出てくるだろう。米国など他国の軍隊を見れば、あらゆる任務や状況に対応するため、小銃にあらゆるオプションを脱着してカスタム可能なピカティニー・レールが標準的に取り付けされているのがわかる。89式にも銃本体の上部に高額照準器を取り付けるための突起があるが、被筒部に関しては拡張の余地がない。精々ブラックテープでライトなんかを巻きつけるくらいだろう。レールを設けて拡張性が向上したとしても光学照準器やその他アクセサリー類の官給品を各部隊数揃えるのにも予算がかかってしまうし、水陸機動団や普通科部隊への配備が優先され末端部隊への配備は遅れてしまうかもしれない。しかし、このことは防衛省側も気にはしているため次期主力小銃にはレールが設置されているかもしれない。

 

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3点連射機構は必要か?

 

 つまり、切り替え軸を「3」に位置に回し、引き金を引いたままにすると3発連射されて止まる機能だ。

 この機能はM16A2が取り入れた機能でベトナム戦争時代、慣れないジャングル戦で未熟な兵士は敵と出会う恐怖からフルオートで乱射してすぐ弾を撃ち尽くしてしまう事例が多々あったのだとか。弾の無駄遣いを防ぐためにM16A2ではフルオート機能が廃止され、代わりに3発連射機能が採用されたが、結局はM16A3になって3発連射機能を廃止して再びセミ、フルオート機能に戻した。

 果たしてこの3発連射機能は必要なのだろうかと射撃の際度々考えることがあった。

臆病な兵士が乱射して弾を無駄に使うというのならそれは単発だろうが連射だろうが3制射だろうが同じことだ。これは、兵士の練度の問題であって銃の機能では解決できないことである。3発連射機能はかえって余計な機能を増やして銃を複雑化させているだけだと思う。

 

脚があるのはいいこと

 

 防御戦闘の際、脚を使用して安定した射撃ができるのは有利なことだ。それに大きな利点は銃を置く時地面に転がさないでいいこと。地面に無造作に武器を転がすようなことはあり得ないが、もし脚がない銃なら銃を一旦手放す時に、付近に銃をかけられるような木はないだろうか等と余計な手間が増えるが、脚があればすぐに脚を伸ばしてその場に銃を置ける。そういう面からしても脚がある89式はいい銃だと思う。

 

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自分が居た「高射特科」という職種

  こんにちは!

  このブログではTwitterの延長線として色んなことを書いていきたいけど、多分一番多くなるのがこの自衛隊ネタ。

 今回はまず、自分が居た職種について少し掘り下げた話をしていきたいと思う。

 

 

 突然だが陸上自衛隊の職種の中で高射特科という職種をご存知だろうか?

 

 陸上自衛隊には16種類の職種が存在し、それぞれの役割や任務がある。

駐屯地祭なんかで一際目立つ普通科隊員や特科火砲、戦車などに比べたらマニア以外にはあまり見向きもされない職種だと思うから高射特科と言われても殆どの人がピンと来ないだろう。

 

 元自衛官で現在は即応予備自衛官をしているけど「自衛隊てどんなことしてるの?」「毎日訓練?」「匍匐前進する?」など自衛隊を退職し娑婆に出ると決まって色々な質問をされる。

 

 毎日が訓練漬けの日々というわけではないし、匍匐前進もするが皆が銃を持って前線で戦うわけではない。

 

 

・戦闘職種と後方支援職種。どの職種も重要!

 自衛隊の職種は戦闘職種と後方支援職種の2種類に大きく分けられる。

 

 戦闘職種と呼ばれるのは主に普通科や機甲科、特科といった戦場で敵と直接火力を交える部隊のこと。駐屯地祭での模擬戦闘訓練展示ではちびっ子にも女性にも人気で自衛隊の花形とも言える存在でもある。

 

 そして後方職種というのは、前線部隊をサポートする役割の職種。戦闘部隊だけ揃っても彼らがいなければ戦闘にしろ災害派遣にしろ作戦遂行は不可能。通信科、衛生科、需品科、輸送科、音楽科などが挙げられる。

 また会計科や警務科といった駐屯地での業務がメインの職種も存在する。

 

これらの職種がお互いに連携することによって自衛隊という日本で一番巨大な組織は機能している。

 

・対空最後の砦

 そして自分が居た高射特科という職種。旧陸軍で言うところの対空砲兵という兵種に相当する。

 

 方面隊には高射特科団または高射特科群が、旅団には高射中隊が配備されていて、自分の所属は師団に配備されている高射特科大隊というもの。

 

 ちなみに空自には高射隊があるけどそれとはまた別ね。

 

 高射特科は対空戦闘専任部隊。地対空誘導弾や低空レーダーなどが装備されており、恐らく陸上自衛隊の中でも装備品に最もお金を掛けている。

 そして、それらの装備を駆使して対空戦闘を行う「対空戦闘の要」、「対空最後の砦」と言われる戦闘職種。

 

 高射特科部隊の任務は対空作戦の骨幹として、低空域を進行する敵航空機を撃墜、またはその攻撃効果を無効にして我が部隊の行動の自由、および重要な地域等の安全をはかり、我が部隊の作戦、戦闘全般の遂行を容易にすることにある。

 

 師団防空。つまり、敵の戦闘機やヘリコプターなんかの航空機から味方陣地や地上部隊を守るのがお仕事。時には空自の戦闘機と共同して対空戦闘を行ったりする。

 

 対空戦闘能力を有してない戦車や特科火砲などの地上部隊にとって敵の航空戦闘力は天敵な訳で、作戦行動の際は高射部隊の対空援護が必要となる。

 

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・近SAM部隊へ

 そして高射特科の中でも自分が居た中隊は93式近距離地対空誘導弾、通称近SAMと呼ばれる器材を運用する部隊。

 

 なにそれって?SAMとは地対空誘導弾(Surfece to Air Missile)、つまりミサイ

ルのことで、高機動車の背中に誘導弾を発射するための発射器を乗っけた感じの器材。近距離対空戦闘において高い要撃性を持つ。

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近SAM

  他にも高射特科の装備器材は射撃部隊には81式近距離地対空誘導弾(短SAM)03式中距離地対空誘導弾(中SAM)87式自走高射機関砲(87AW)という車両器材もあったり、ホークというお化けみたいに大きなミサイルを運用する部隊もあるが、配備されている装備は部隊によって異なる。あとは低空レーダー装置や通信を担当する部隊もある。

 

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それと、12.7㎜重機関銃。高射隊員はHMGと呼ぶが普通科とかはキャリバーて言ってる。自分は射撃手としてそれをぶっ放したりもしていた。

・自分が何故近SAM部隊を希望したか

 そもそも自分の第一志望は普通科だった。

 どういうわけか希望にすら挙げていなかった高射特科に配属先が決定。遥々遠く離れた他県まで高機動車に詰め込まれドナドナされてきた身であって、高射の存在などうっすらとしか知らなかった。

 

 まあ、どうせ自衛隊に入隊したのだから実戦部隊に所属したいという思いがあったのと後期教育でお世話になった班長について行きたいと思ったこと。あとその中隊に凄く美人な先輩が居るのを知り当然のことながら近SAMを熱望した。

 

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・前線部隊と共に

 特に近SAMは低空で進行する航空機を迎え撃つため普通科や戦車部隊に追随しながら展開することも多いため、高射の中でも最も前線に近い位置に立つことになる。

 

 敵だって馬鹿じゃない。我の対空火器を警戒してるから、戦闘機は山の陰を地上に近い低空で飛行して山影から飛び出してくるだろうし、戦闘ヘリコプターは山の尾根を蛇みたいに縫うようにして接近してくる。

 

 そして山影を利用して低空を飛行する目標はレーダーでは捉えにくいため、目と耳、あとは地形を見極める能力が頼りとなる。

 顔を出してきた敵を待ち構えているのだが、それは自分から見ても敵から見ても大抵お互いが目視で捉えられる距離。一瞬の判断力とスピードが要求される。

 

 後期教育を終え晴れて高射戦闘員になったわけだけど、最初の2年間くらいは失敗の連続で、散々怒鳴り散らされたり上司からモンキーレンチが飛んできたりと今となってはいい思い出。

 

 その話はまた次の機会に書くことにして、高射職種について概ね伝われば幸い。まだ初心者で不慣れな文章だけどよろしくね。